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Dolls…
第16章 誘惑の果て
「しかしいつ来ても広い屋敷だな。椿ちゃん、迷子にならない?」

「あ…、たまに…」

「だよね!こんなでっかい屋敷にこもって人形造りなんて、マジ変わってるわ!」


"いつ来ても"ってことは、この屋敷にはよく来てるんだ。

幼馴染みなんだから私なんかよりも知ってるはず。

椎葉さんとは正反対の砕けた口調に私の緊張も少しずつ解れて行く。



……ドクン





心臓が高鳴る。

この広い廊下には私と安藤さんだけしかいない。

椎葉さんの事を聞くなら今だ。

だけど、いざ2人っ切りになると何から聞けばいいのかわからない。

聞きたいことが有りすぎて何から聞けばいいのか自分の中で纏まりが付かないのだ。




「…あの、安藤さん」

「ん?何?」

廊下を歩きながらとにかく安藤さんに話しかけた。

言いたいことはまだ纏まってないけど


「し、椎葉さんとは…、どんな関係なんですか?」

「さっきも言ったじゃん。ただの幼馴染み」

「そ、ですか…」


違う。

聞きたいのはこんな事じゃない。

当たり障りのない会話から始めたって意味がない。

私が知りたいのはここじゃない。


歩きながら安藤さんに背中を向けたまま訊ねた。

…この位置付けでよかった。

私の顔を安藤さんに見られたくなかった。

今の私の顔、きっと酷い形相になってる。


椎葉さんの事を探ろうとうずうずしてる最低の顔をしてる。



「あの…、安藤さん…」

「はい?」


私が聞きたいのは…

知りたいのは…



「し、椎葉さんって…どんな人なんですか…?」

「え?秋人?」

「あ、の…っ」



確信に近い、だけど遠回しな言い方。

いきなりこんな事を聞いて、きっと安藤さんは私の後ろで不思議な顔をしてるはずだ。




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