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第17章 悪魔のささやき

「それは…っ」

「これは…、椿ちゃんに聞いてもいい質問なのかな？」

ニヤリと笑った安藤さんの顔。




「━━━━━━━━っ！！」


…ドクンッ






多分、安藤さんは気づいてる。

奈々さんには手を出さなかった椎葉さんが、私には手を出してるって事。

人形作りのために、奈々さんとはしなかった厭らしい行為を繰り返してること。

もしかしたら、私がいない隙に椎葉さんがバラしたのかも知れない。


私の口から聞き出そうとしてるの…？



安藤さんは全てを話してくれた。

辛い気持ちを堪えながら、私に何もかも打ち明けてくれた。

私も安藤さんの質問に答えなきゃいけない。

だけど、何からどうやって切り出して説明すればいい？




顔を真っ赤に染めてあたふたする私を見ながら、安藤さんは…


「なんてね！大丈夫！皆まで聞かないよ！」

「……へ？」


そう言って、安藤さんはいつものあの太陽のような笑顔に戻った。

「ま、男と女ならいろいろあるよ！椿ちゃんが、こんな山奥の屋敷にムリヤリ閉じ込められてるんじゃないかって心配したけど、俺が心配することじゃなかったかな」

いつものあの太陽のような笑顔に…。

「そ、それは…」

「隠さなくても、さっきの泣き顔を見てわかったよ」



何か、私…、さっきからからかわれてる気がする…。


くすくす笑う安藤さんを見ながら、私は少し気が楽になった。

椎葉さんはこんなふうに笑顔を見せたりしない。

椎葉さんの口から出てくる言葉はどこか真実味がない。

だけど、明るくて他人を気づかえる安藤さんの笑顔を見ていると、私まで心が明るくなってしまう。

あんな話を聞いた後だと言うのに、1番辛いはずの安藤さんの笑顔に癒されてしまった。


いつしか、私の頬を流れていた涙も乾いていた。