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Dolls…
第19章 泣きながら、あなたを…
前は椎葉さんが一方的に私を攻めて楽しんでただけだった。

その度に私の心は羞恥と屈辱で小さな死を繰り返してた。

でも、今は…

私から椎葉さんを求める時がある。

焦らされ続け、うずうずした欲を何とかして欲しくて

椎葉さんに誘導されるかのように椎葉さんを求めてる。


前の私なら意地でも椎葉さんを求めたりなんかしなかったのに…。




胸が苦しい…。

だけど、この苦しみの正体を探ろうとしちゃいけない。

考えちゃいけない、認めちゃいけない。




だって、それは…

認めたら、何かが壊れてしまう気がしたから。

何かが終わってしまう気がしたから。





「は…っ」

そんな事より、今は部屋に帰る事だけを考えなきゃ。

こんな痛々しい体で部屋まで辿り着けるのだろうか?

とりあえず、部屋に戻ったらベッドに横になろう。

時間はわからないが恐らくもう夜中だ。

背中はベッドに付けれそうにないから仰向けにしかなれないけど、明日は椎葉さんに薬か何かを貰おう。


壁から体を離して背中を引きずるように歩みを進ませようとしたその時だ。









「あっ、椿ちゃんっ!」

突然、私の名前を呼ぶ声が廊下に響いた。

その声に反応して顔を上げると、私の前方にいたのは

「安藤、さん…?」

長い廊下の遠くの方から駆け足で私に走り寄って来る安藤さんの姿だった。

「あーよかった!部屋にいないから心配しちゃったよ!」

「安藤さん、何で…?」

私の目の前まで駆け寄った安藤さんははぁはぁと息切れを起こしていた。

安藤さん、もしかして私の事を探してくれてたの?

この広い屋敷の中を息が切れるほどに走りながら?
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