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第21章 あなたが教えてくれた

「あの…、あ、安藤さんが私に…」

だけど、もし止めて貰えなかったら…？

止めても貰えずあっさりと手放されてしまったら…？

そう考えると…、怖くて怖くてその先が言えない。


「……………っ。」

「はぁ…。用がないならもう━━━」

「あ、安藤さんが私に…っ」


でも、言わなくちゃ…。

ちゃんと聞かないと、椎葉さんの気持ちはわからない。

こんな試すような真似やっちゃいけない…

でも…


「い、一緒にここを出ようって…。"俺と一緒にこの屋敷を出よう"って言われたんです…。で、でも私は…」


椎葉さんは私の台詞を黙って背中で聞いてる。

何も言わずに黙って、その場に立ち竦んで、ぴくりとも動かずに…。

「私は…、椎葉さんのモデルだから、勝手に真似は…」


"人形のモデル"

そんな大義名分を振りかざして椎葉さんに引き止めて貰おうとしている。

椎葉さんに話しかける声も心なしか震えてる。



…お願い、椎葉さん。

答えて…。

椎葉さんの本音を聞かせて。

"行くな"って、引き止めて…。






「……ふっ、奈々の事で俺に復讐するつもりなのか？あいつは…」

「そ、そうじゃありません…。ただ、その…」






椎葉さんにしてみても、安藤さんが私を連れ出す理由はそれしか思い浮かばないだろう。

安藤さんからすれば、私が奈々さんと被って見えてるだけで

同じ過ちを繰り返したくない、そんな罪悪感からだ。


「ただ人形みたいに大人しくしてればいいものを…」

「え…？」




「言ったはずだ。俺はお前に、もう何の興味もない。尚人のとこへでも何処でも好きなとこへ行けばいい」