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Dolls…
第23章 危険な香り
絨毯の床に倒れたからかそんなに痛くはなかった、が

慌てて起き上がろうとしたその一瞬の隙に



━━━━━「……っ!やっ」



安藤さんが私の体の上に股がって来たのだ。

私は絨毯の床に押し倒される体勢になってしまった。




「や、やだ…、安藤さんっ!」




私に股がった安藤さんはそのまま私を睨むように見下ろしている。

その瞳に背筋が凍った。

垂れ下がる安藤さんの前髪から水滴がぽたりと落ちて私の頬を伝い落ちていく。


「ご、ごめんなさ…、か、勝手に安藤さんの電話に出てしまっ…」

「いいよ。そんな事で怒ったりしないよ」

「じ、じゃぁ、退いて下さい…」

「残念だけど、それは出来ない」


安藤さんに両手を封じられて押し返す事も出来ない。

両足で蹴り返す事は出来そうだが怖くて足も動かない。

静かな部屋で聞こえてくるのは時計の秒針と私の恐怖に怯える心臓の鼓動だけ。


「ど、どうして…、何で…?」

何で私は安藤さんに押し倒されてるの?

何で安藤さんが私に股がって動けないようにしてるの?

どうして、こんな体勢に…?

「だって、俺が退けたら、椿ちゃん逃げちゃうじゃん?それでなくても俺のそばから離れようとしてるのに…」

「え…?な、何の事、ですか…?」



安藤さんのそばから離れる?

何なのそれ…?

どういうこと?

私が安藤さんのそばから離れるって、何の事を言ってるの?


安藤さんの台詞の意味がわからず、恐怖と疑問が頭の中で入り交じり安藤さんの体の下でガタガタと震えることしか出来ないでいる。


「すぐに俺から離れようとする…。椿ちゃん1人ぐらい養えるのに…ね?」



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