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Dolls…
第26章 Dolls…
「佇む紳士の背中が寂しげで、でもどこか儚さも感じれて素晴らしいって先生が褒めてたよ。もしかしら、来年のオープンキャンパスの時のパンフレットの表紙になるかも!」

「褒めすぎだって…」







そう…。

その絵の紳士の寂しげな背中は…、絵の中だけじゃなく私の心の中にまで染み付いている光景なのだ。

瞳を閉じれば瞼に裏にまで浮かんできそうな光景。


「ねぇねぇ、あの絵の紳士って誰をモデルにしたの?」

「別に…、私の空想」

「え?そうなの?随分事細かく描かれてたから椿の彼氏かなぁとか思ってたんだけど」

「残念ながら、彼氏じゃないよ」






彼氏じゃない。

私の絵に描かれた人物は彼氏じゃない。

彼氏じゃないけど…。







そして、私と茜は課題作品を仕上げるべく帰路に付きながらも必死に知恵を絞っていた。

どんなアングルで描くか…、何をテーマにするか…、モデルはどうするか等。


「人物画にしようかな…。椿みたいに空想上の王子様とか?」

「いいんじゃない?私は風景画にしようかな?」


空はいつの間にかオレンジに色づいていた。

暖かそうな太陽の色とは逆に外に出ると冬の風が肌を刺すように吹きすさんでいる。

寒さのあまり私と茜は身を縮めた。


「さっむーっ!早く帰ってお風呂に入りたいっ!」

「そうだね。私も早く帰りたい」


ガタガタと震える私と茜。

11月の半ば、季節で言えば冬の始まりと言ったところだ。

北風が吹く街を茜と一緒に歩いていると


「ねぇ、ところでいつ招待してくれるの?椿のアパート」

「え…?」






━━━━ドキッ


茜のその声に私の心臓が動いた。





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