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Dolls…
第5章 静かな晩餐
「スケッチブックを全部見せて貰ったが、風景画ばかりだったな。人物画は描かないのか?」

「風景画の方が好きなんです…」


東京に出て来てから、見るもの全てをスケッチブックに描き殴って来た。

田舎と違って東京には創作意欲を掻き立てるものが多かったから。

大きな川に架かる綺麗な橋や、高層ビルが並ぶ都会的な街並み。

田舎の山や川といった自然を描いてるのも楽しかったけど、見たことや触れたことがないものを描いている時が1番楽しかった。

「だったら、今度は俺の作品の人形でも描いてみろ。新しい挑戦だろ?」



……この人はどうしてこんなにも私を誉めてくれてるの?

昨晩やさっきみたいな酷いことをしたかと思えば、急に私を"綺麗"と誉めたり

私の絵を見て"悪くない"と言ってくれたり。


急に私に見せたその"優しさ"に私は不信感を覚えずにはいられなかった。

上げるところまで上げて、また地面に叩きつけるようにドン底まで突き落とす気なのかも知れない。


忘れた訳じゃない。

忘れたくても忘れられないくらい酷いことをした人だ。

甘い言葉で油断させてまた何かを企んでるんだ。


そう思い出すと今目の前に並んでる料理すら怪しく見えてしまう。

この料理にだって何が入ってるかわかったもんじゃない。

安心して半分以上を食べてしまったけど、私が空腹なのを利用して食事に何かを…。


全てのものが怪しく見えて来た。


広いダイニング、キャンドルの炎、用意された食事、ミネラルウォーター、この雰囲気…。



心臓がドキドキ高鳴って蒸し暑いような寒いような…。

目眩もしてきた…。




「おい、どうした?」

考え過ぎたせいか頭もクラクラして来た。





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