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Dolls…
第6章 甘い嫉妬
しかし、聞こえてくる椎葉さんの声は…。


「くどい。しつこい女は嫌いなんだ」

「2度と俺の前に現れるな。寒気がする」


健気に食い下がる女性に対し、まるで氷のような冷たい台詞で追い詰めていく。



どうしよう…。

盗み聞きするつもりはないけど、体が動かない。



「私、本気であなたを愛してるのよっ!!忘れられないの…っ!!」




…あんな綺麗な人にあそこまで思われたら、普通の男性なら迷惑なはずがない。

寧ろ喜んでOKするに決まってる。

椎葉さんだって、口ではあんな事言ってるけど、本音は嬉しいに決まってる。

だって、今にも泣き出しそうな声だもん…。

本当に椎葉さんの事が好きなんだって事が伝わって来る…。




ズキッ




……えっ?

その時、胸の奥に感じたちいさな痛み。

まるで鋭い刃物で刺されたかのような痛みを感じた。


風邪がぶり返したから?

頭だけじゃなくて、肺にまで菌が回っちゃった…?




「もう1度私を見てよ…。秋人…っ!!」



そう言って彼女は、そっぽを向く椎葉さんの背中にしがみつくようにして抱き付いた。





━━━━━━━ッ!!

ズキッ…





痛い…。

胸が、痛い…。

彼女が椎葉さんに抱き付く所を見た瞬間、見えない刃物が心臓を一気に貫いた。


風邪のせいだ。

風邪が、ぶり返しただけだ…。

なのに、何でこんなに悲しいの…?


何だかわからないけど、胸が痛い…。

見たくない…っ!!

思わずその場から目を反らして立ち去ってしまいたかったのに、金縛りにあったみたいに動けない。


あんなもの、もう見たくない…っ。

聞きたくない…っ!




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