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タンバリンでできたオーロラ
第18章 ダッテリーノ

 缶詰を積み上げ終わった俺は、エプロンのシワを伸ばしながら二三歩後ずさって、自分の仕事の成果を見上げた。

 小さな店内のレジ前のスペースに、何段にもなって積み上げられたイタリア製の高級トマト缶。

 間接照明の照らし出す、黒いラベルに描かれたサレルノ産の赤々としたトマト。山となったその様は淫靡にも感じられる。

 一服つけよう。

 俺は表に出ると、人目もはばからずに煙草に火をつけた。
 立ち昇る紫煙が目に染みたが、手で払ったりはしない。

 そういうのは粋じゃない。
 まくりあげた長袖がズリ落ちたりしたらどうする。

 そんな無様を晒すぐらいなら、腕を腰に当てたまま苦虫を噛み潰していたほうがいい。
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