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タンバリンでできたオーロラ
第25章 愛女神28
 ゴゴゴゴゴゴ……

 偏西風が運んできた愛と美の花粉。

 ギリシア謹製の巨大女神、アフロディーテが、日本海を割って降臨。

「ギシャー!」

 関門海峡にまで迫っていたカーリーが、自分と同質量の相手を敵と見たか、威嚇的な唸り声を立て、剣を振り上げる。

 対するアフロディーテはセーラー服姿で応戦の構え。
 機関銃は持ってない。素手だ。

「きょおおぉぉぉぉぉおんっ!」

 いや、ちょっと、キミまでつられて奇声を発するのはやめてよね。
 仮にも、つか、正真正銘の愛と美の女神なんだからさ。

「いけえっ! アフロディーテ! パンチだ!」

 交通封鎖されていた関門橋の上から、一人指示を出す俺。

 愛と美の女神は夢の中で俺に調伏され、完全の俺の僕となっていた。

 ヴンッ! ヴンッ!

 唸るカーリーの風斬る豪剣の嵐をかいくぐり、腰をかがめてアマレスばりのタックルをアフロディーテが決める。

 パンチしろっつったのに!
 所詮は愛の女神か。臨機応変。移ろうもの。それが愛。

 ざんぶと二神が海中にぶっ倒れた拍子に津波が起きて、橋の上に大量の海水がかぶる。

 その波にさらわれて、俺は流され、もう戦いどころではない。

「あとはっ……あとはテキトーにやってくれえっ!」

 それだけ叫んで海の藻屑となった。


 西風のゼビュロスが俺をキュテラ島に運んでくれることは多分ない。








《愛女神28 了》
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