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第1章 ごムぞうり

《ゴムゾ売り株式会社》

　名刺にはそんなことが書いてありました。あと代表取締役社長とかなんとか。

「社長さんなんですか」
「おうともよ。個人事業主だけどな」
「お仕事は何をされているんですか」
「ネクタイを締めているな」

　それは何とも素敵そうな仕事です。

　ゴム象は一瞬、ブルーインパルスになれなくても、そういう仕事でもいいかもしれないと考えてしまいました。

「毎日ですか」
「ああ、毎日だ」

　ますます素敵です。

「お休みの日は何をなさっているんですか」
「ネクタイを外しているな」
「それはいいですね」

　ゴム象はすっかり魅了されてしまいました。

「なんだ、うらやましいのかい？」
「ええ、少し……いえ、とても」

　ゴム象のいい所は正直な所です。
　だから群れでもうだつが上がらないのです。

　でも、いい所ではあります。
　正直な人ってやっぱり素敵だと思うんです。