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狐面の男に 愛されまして
第2章 不審な男に 絡まれまして
1限目が終わったその時間。彼女は廊下を歩いていた。
「おはよう、サチ」
「…」
不思議ちゃんの、名前を呼ぶ声──。
教科書を抱えたまま彼女は立ち止まる。
“ サチ──? ”
自分でも迷ってしまうほど、その名で呼ばれたのは久しぶりだったのだ。
声がしたのは、右手の壁
…の、窓の、向こうの
「そう、僕の声が聞こえたろう」
白い顔に、釣り上がった眼。
「──…。(キコエマセン)」
...
彼女は再び歩き出した。