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ネムリヒメ.
第8章  雨.





「っ…た……やめて」



ザーザーと激しい音をたてて降りしきる冷たい雨のなかを無理矢理歩かされ、冷えきったカラダはそこらじゅう痛みが増し、頬には溢れた涙なのか雨なのかわからない滴が滑り落ちていく


なんで……こんな…


痛くて、怖くて、この場から消えたくなる


訳のわからないまま玄関にたどり着くと、彼は乱暴に扉を開けてアタシを中へ引き入れた


「…おいっ!!!」


「っ…」


大きな声にカラダがビクリと強張る


「っ誰だ…オンナ連れ込んでんの!!」


その不機嫌を通り越して怒りとも受け取れる彼の声に、リビングから葵くんと聖くんが驚いた様子で飛び出してきた


「わっ!? ちょっと、なにがあったの…?」

「ちーちゃん!?」


ずぶ濡れのうえ、傷だらけで震えるアタシを見てふたりが驚きの声をあげると、隣の彼がさらに怒りに満ちた声をあげる


「…コイツ、なに!? 誰のオンナ?」

「っ…ぅ…」


掴んだままの手首を引っ張られ、揺すられるカラダにズキリと痛みが走る


「っ雅(みやび)、今すぐ離してあげて」


ぇ……


"連れ込む"……"誰の"……

いかにもここが自分の家であるような彼の言葉

それに輪を掛けて、繋がる会話に不安が過る


この人…聖くんたち……知り合い!?


「はぁっ!?」


上から鋭い視線で刺すよう睨みつけられているのが、顔は見なくても痛いほど肌で感じる


…きつく掴まれたままの手首が痛い


…カラダじゅうが冷たくて痛い


けれど、なによりも…胸が押し潰されるように痛かった


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