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ネムリヒメ.
第22章  あの夜の…….




……………………



「ッ…やめろ、葵!!」


千隼が飛び出してすぐのカジノのプライベートルーム

バタンッ…と重厚な扉が閉まるのと同じタイミングで室内に響くドカンという鈍い音と渚の怒鳴り声


葵の繰り出した強烈なミドルキックは雅の脇腹を捉え、蹴り飛ばされた雅はソファーにぶつかって床へと崩れ落ちた

その衝撃でテーブルから落ちたグラスがパリン…と華奢な音をたてる


「…その顔に傷つけないだけマシでしょ」

「ッ…あお……っ、テメ…」


痛みに顔を歪め、肋骨と脇腹を押さえ咳き込む雅に、瞳から光を消して冷酷な表情をした葵がにじり寄る


けして拳では殴らない葵…

無論それは美容師の命とも言えよう、美を生み出すゴットハンドである自身の手に傷を付けない為

……でもあり、拳よりもリーチの長い足技で相手を寄せ付けないことで、その綺麗な顔に傷を付けない為でもあった

故に、極められた彼の蹴り技はどれも強烈で、実のところケンカをさせれば負けを知らなかったりするわけで

その強さは、自分より体格のいい相手を容易く地に沈めてしまう程なのである


ちなみに寝起きの葵となれば、その最高の機嫌の悪さが彼のステータスにどう影響するかなど容易く想像もつくであろう

とにかく、葵にケンカを仕掛けるなど言語道断、天罰覿面なわけであって…



そんな葵にガチで二度も蹴り飛ばされた雅

最悪なことに肋骨にひびが入ってしまったのか、咳き込む度に骨に響くようなズキズキとした痛みが彼の腹部を襲っていた



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