この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
あい、見えます。
第6章 見すごせなくて




■見すごせなくて




朝10時過ぎ。

佐々木はマンションのベランダに布団を干しながら、空を見上げた。

ようやく秋めいた季節に入ったらしく、天気の急変も減ってきて、暫く穏やかな日々が続いている。

今日は夕方まで、たっぷりの陽射しを使い、寝具も日光浴ができるだろう。



仕事休みが平日のせいで、今日も、辺りは静寂に包まれている気がする。

バーテンダーの仕事は、体力勝負だ。

加えて、サービス業でもあるし、その割には高給という仕事でもない。

けれど、"休みの日に穏やかな時間が過ごせる"という点は、佐々木の好きな、この仕事ならではの魅力の一つだ。



布団を布団バサミで止めてから、ふと、佐々木はベランダの手摺を辿り、右へ視線を向けた。

そこは、遥の家のベランダだ。

彼女も同じように、布団を干したらしい。

薄手のグレーのブランケットと、淡いベージュのカバーがかかった毛布が見える。

一昨日も今日も、朝に出かける日課を休んでいるようだが、彼女も彼女なりに日々を過ごしているのだろう。

小さく微笑んで室内に戻ると、佐々木はソファに腰掛けた。



(それにしても……)



テレビをつけながら、佐々木は改めて、ここ数日の記憶を探る。

どこかで手帳を失くしてしまったらしく、日々の些細な事をメモすることが出来ない。

仕事に必要なことや、とりとめのない事を書き連ねていくのが、佐々木の習慣だった。

新しい手帳を買おうか迷ったが、「ふとした拍子に、ひょっこり出てきたら」という思いが、決心を鈍らせている。



(明日、仕事前に、ちょっと手帳探しでもするかな)



苦笑して、ガラステーブルの上のノートパソコンを引き寄せた。

すっかり忘れていた『WAVE』の歌詞でも、確認することにしよう。

無骨な指で、キーボードを叩く佐々木の耳に、外へ出かけていく隣室の美しい人の足音が、柔らかく響いた。






/110ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ