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愛玩寵姫 - Dream Dolls - 茉奈
第1章 ●わたしの普通が壊れてく…
手足を縛られた異常すぎる状況の中、茉奈の頭は混乱していた。

(いや…怖い…!でも…)

「そ、そこに誰かいるんですか…?!」

答えはない。ただ、暖かなシチューが、再び口元に持ってこられたのがわかった

「お願い…。ほどいて…!…家にかえして…」


そこで、シチューを持つ何者かが一瞬驚いたように手を止め、
彼女の耳元に直接ささやきかけた

「だいじょうぶよ。ここは貴女の家だもの」

耳栓越しに聞こえてきた声は、確かにあの若い女のものだった。

「あなた、ウチに居た…!!……誰、誰なの」
茉奈の疑問に、まるで口づけでもするかのような距離で、女がささやく。
「あなたを昔から知っている者よ」
「昔からって…。パパは、ママは。」
「大丈夫。安心して。貴女のパパもママも、この日を待ち望んでいたのだから」
「……どういう、こと…?」

混乱する茉奈に、女はやさしく、頭を撫でながら語り掛ける。

「私の名前は牡丹。牡丹と呼んでちょうだい」
「……牡丹…さん…?」
「そろそろ、『お薬』の時間でしょう」
「…えっ!?」

若い女…牡丹の一言は、茉奈を驚かせるのに十分だった。
彼女が一日3回、必ず飲むことになっている『薬』。
彼女が初潮を迎えてからずっと続くその日課は、家族以外、誰も知らないはずだった。

「なんで…薬のことを」
「貴女のことを昔から知っているって言ったでしょう。大丈夫。あの薬はあなたの眠れる才能を、眠らせておくためのもの。怖がらなくていいの。そろそろ…薬が切れて、10時間が経つわね」

(…どういうこと!?パパからもらっていた、私のアレルギーを抑えるためという薬…。高価な特別配合だから、他人には秘密だよ、と言われていたあの薬のことを、どうして、このひとが…?)

茉奈は薬を飲まずに長い時を過ごしたことはなかった。
どんなに遅くなっても、12時間を超えてはいけない、ときつく言い聞かされていた。
お前を「先天性のアレルギー」から守るためだ、と教えられて。

(…いや…怖い…「アレルギー」がもし出てしまったら…!)

――― ど く ん !

怯える茉奈を、その次の瞬間、下腹部の底から脈動が襲った。
それは初めて感じる、強い疼きのようなものだった。
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