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第6章 イーオー

「そうですか、ならばゼウス。私にその雌牛を預けて下さるかしら？なにもヤマシイ事がないのなら簡単なことでしょう？」


とうにお見通しのヘーラーは知らないふりをしてゼウスに牝牛の引き渡しを要求しました



「うっ……あぁ、いいだろう…」


ゼウスは浮気の露見を恐れて、非情にもイーオーをヘーラーの手に委ねてしまう



その雌牛をゼウスから貰うと、ヘーラーは百眼の巨人アルゴスを見張りに付けた。



この巨人は身体中に百の眼を持ち、眠る時も半分の50の眼は開いたままであったので、空間的にも時間的にも死角が存在しなかった。




「まずいことになった。ヘルメース、イーオーを助け出してくるのだ！」



ゼウスはイーオー救出の任をヘルメースに命じる



「ふむ。奴の目を眠らせる事が出来たなら簡単な事だ」


ヘルメースはゼウスの命でイーオーの前に立ちはだかっているアルゴスの全ての眼を草笛で眠らせると、その首を剣で切り取った。