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第9章 セメレー

ゼウスは密かに人間の姿をとってセメレーと交わり、セメレーは身重となった。



夫であるゼウスがテーバイ王女セメレーのもとに通っていることに気づいたヘーラーは、恐ろしい計略を用いて復讐を図ることにした。





ヘーラーはセメレーの乳母に化けてこうそそのかした。



「あなたの交際相手は、本当は恐ろしい化け物かもしれない。怪しいと思ったら、本当の身分を明かすように言いなさい」



実はゼウスの名を騙る偽者ではないかという疑念をセレメーに吹き込み、本物のゼウスである証拠を見せてもらうよう唆したのだ。



それを真に受けたセメレーはゼウスに


「愛の証に私の願いを一つ聞いてほしい」


と持ちかける。



ゼウスが



「ステュクス川に誓って必ず叶える」



と、約束すると、セメレーはゼウスに真の姿を見せるよう迫った。



しかしゼウスは雷火をまとった神の本性を現せば、生身の人間の体では耐えきれず、たちどころに焼け死んでしまうと分かっていた為、ゼウスは約束したことを後悔したが、ステュクス川にかけた誓いは神といえど背けない絶対的なものであった



ゼウスはセメレーの望みを何でも叶えてやるという誓いを取り消すわけにいかず、仕方なく雷光に包まれた姿でセメレーを訪れたが、それは生身の人間に耐えられるものではなく、セメレーは焼け死んでしまった。