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恋花火
第17章 Fall in love
ここは夜になると、いやらしいネオンを放つ場所だということが、初めて来る私でもわかった。


だって、私の住む場所にも、似たような看板が立ち並ぶ一角があるから。


あれは確か中学三年生の冬休みのこと


タケルと二人で携帯電話を買いに行った帰りに、たまたま通ったその場所で


タケルのお母さんと、知らない男の人が歩いているところを目撃したことがあった。


そんなことを思い出してしまった。








「菜月ちゃん?」


先輩に名前を呼ばれ顔をあげると、いつのまにかその通りから抜けたのか、辺りは住宅街だった。


「もう少し歩くけど平気?」

「はい。」

「じゃあ階段ダッシュとかイケる感じ?」

「はい。…え?階段ダッシュ?」


陸先輩はニヤッと笑うと、とある方向を指差した。


その指の先に目をやると


長い長い階段が、住宅街の真ん中に伸びていた。


「行くよ」

「えぇ!?」


陸先輩はいきなりその階段を駆け上がり始めた。


私もその後に続く。


「俺、部活休みの時いつもここで階段ダッシュしてんだ。」


先輩は呑気にそんなこと言ってるけど、私はもう返事すら出来ない……


これ100段くらいあるんじゃない?ってくらいの階段を登り終えると、肩で息をしなければならないほど苦しい。


「さすがマネージャー、余裕だね。」

「全然……余裕なんて」

「見て。疲れふっとぶから。」


顔をあげると、サァッと風が頬を撫でた。


眼下に、街が広がっていた。

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