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恋花火
第11章 HERO
一人で登下校するようになって二週間は経った頃、季節は秋を迎えようとしていた。


文化祭では、私のクラスはおばけ屋敷をやることになっていたので、連日部活後は文化祭の準備に時間を費やしていた。


当然寝不足になり、電車が走り始め二駅ほど通過した辺りで、私はウトウト眠気に襲われてしまった。


たまった疲れと睡魔により、いつもドア側に立つよう徹底していたのに……その日は油断してしまった。


夢と現実の世界を行ったり来たりする中、ふと感じた違和感。


……お尻の辺りに気配を感じた。



ハッと気付いた時には時すでに遅く


怯えていたことが、現実になってしまった。


前も一度味わった恐怖______そう、痴漢だ。


"やめてください!"


そんな風に言える女性は、本当に存在するのだろうか。そう疑うほどに私は恐怖に支配されていた。


もし、言ったとして。逆上され暴力を振るわれるのではないか。


怖い。


誰か助けて。誰か、誰か…


"絶対、絶対一人で電車乗るな!"


そう言ってくれたタケルはもう隣にはいない。


私は一人で頑張るしかないんだ。


だけど言えない。


降りるはずの駅はまだまだ先だ。


次の停車駅でひとまず降りて、そして……


悩んでいる間にも絶えず撫で回され続ける下半身


気持ち悪い


……吐いてしまいそうなくらい


ただ黙って耐えるしかなく、私はギュッと目を瞑った。


______その時。


「やめてくれませんか。」


そう、背後から声がした。
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