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Complex
第5章 居所
「ありがとう、ございます」

友香はベッドに半身を起こしたまま、そのマグカップを受け取る。

どれだけ眠ったのだろうか。
目がさめると、カーテンの開けられた大きな窓からは朝日よりもかなり高い位置から太陽が覗いている。
見渡しても、見慣れない景色。
ここがどこなのかをようやく思い出した頃、綾瀬がマグカップを2つ手に取り部屋に入ってきた。

「あれ?起きた?ちょうど起こそうかと思ってたとこだったのに」

寝ぼけ眼の友香にそう言いながら、ゆったりと湯気の当たるカップを手渡してきたのは、つい先ほどのことだ。

マグカップからはふんわりと優しくコーヒーの香ばしい香りが立ち上っている。
たっぷりとミルクと砂糖が入っているそれは、友香の起き抜けの体を優しく温める。

「あの、今何時?」

キョロキョロと時計を探しながら友香は尋ねる。
昨晩見渡した部屋の続きにあったこの部屋には、時計も何もない。
セミダブルのベッドと大きな姿見。
その横に申し訳ない程度に細く高い棚が1つあるだけだった。

「ん?そろそろ12時を回ったかな?お腹空かない?昼ごはんどう?」

友香はその問いに曖昧に頷いた。
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