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Complex
第2章 始動
ゆったりと時間を忘れて料理に舌鼓を打ち、会話も弾む。
知り合って一週間しか経っていないのに。
気を遣うこともなく、自然に笑っていられる。

とは言っても、綾瀬の世界は広い。
今の友香は仕事かダイエットの話くらいしかできる会話はない。
けれども、綾瀬の引き出しは豊富だ。
学生時代から始まり、サラリーマンになったけれど、わずか一年で退職。
そこからは自分に素直に生きてきたのだろう。
毎日を、自分のペースで進んでいる。
それでも友香が卑屈にならないでいられるのは、やはり綾瀬の人柄かもしれない。

「そろそろ、出ようか」

気がつくとカウンターはスーツを着たサラリーマンで溢れていた。
やはり、くたびれたスーツを着ている人は誰もいない。

綾瀬は知らない間に会計を済ませていた。
もちろん奢ってもらうつもりはなかったけれど、想像通り会計もスマートだった。

「この後、どうしようか?友香ちゃんお酒飲んでるから、そのまま今日は車運転できないし。どうする?」

コインパーキングに停めた車に乗ると、エンジンもかけずに綾瀬は言った。

そうだった。
綾瀬に車を出してもらっていたから忘れていた。
綾瀬の家に車を停めてきたこと。

それを知っているうえで、あえてお酒を飲ませたのだろうか。
やっぱり、手慣れている。
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