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純の恋人
第9章 彼の本性
 
 明らかに一般人ではない、身の凍る雰囲気。多分この人達は、狩野組――ひき逃げ犯の仲間で、病院と裏で通じている悪い人間達だ。

 でも、そんな事が分かったからって何か出来る訳じゃない。ただ体は震えて、手足の先から冷たくなっていく。妙な真似なんか、出来るはずもなかった。







 車は随分長い事走っていた。けれどそれは、私の感覚を狂わせる策かもしれない。街から遠くへ来たのか、それとも近くなのを悟られないよう巡回したのかは分からないけれど、私はどこかで車を下ろされる。積み荷を運ぶように抱えられて、何回かドアを開け閉めする音が聞こえた。どこかの室内である事は確かだけれど、手がかりになりそうな情報を耳から得る事は出来なかった。

 そして下ろされると、手を天井かどこかから吊られ、椅子に座らされる。縄の長さは立ち上がるくらいの余裕があるけれど、逃げられる程ではない。震えた足で立っているのも辛いので、ひとまずそのまま座る事にした。

 足の拘束は外され、目と口も自由にされる。部屋は何も置いていないわりに広く、赤いカーペットが敷かれている。ドアは、私の背後に一つだけあった。
 
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