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純の恋人
第11章 過去から、未来へ
 
 ようやく引っ越しした今のマンションは、今のところ事務所が払ってくれている。生活費も貯金を崩せば問題ないけれど、いつかはそれもなくなってしまう。仕事をしなきゃ、と思うと、私が一番やりたいのは歌なのだ。

「……別に、何もやめろと言っている訳じゃない。ただ、あんないつお前を襲うか分からない頭の悪そうな犬がうろついているなら、俺が安心出来ないだろう」

「成実さんは、何だかんだで若頭さんが怒るような事はしないから大丈夫ですよ。落ち着くまでの間の護衛ですし」

「……お前がそんな呑気にしてるから、心配なんだけどな」

 以前の私に比べたら、大分しっかりしたと思うんだけれど、国重さんは厳しい。反論出来ずにいると、また溜め息を吐かれた。

「まあいい、そういうところもひっくるめて守ってやるのが、俺の役割だからな。顔を出して歌うようになれば、今まで以上に面倒なファンも増えるだろう。なにかあったら、まず俺のところに来い。もう二度と、声を聞き逃したりはしない」

「……国重さんは、本当に真面目ですね。償いのつもりなら、もうよしてください。私、充分に助けられましたから」
 
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