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純の恋人
第2章 三人の男
 
「……ありがとうございます。でも、私分からないんです」

「分からないって、何が?」

「あれが私にとって普通の事なのか、そうでないのか」

 彼は目を丸くして、首を傾げる。私にだって分からないんだから、彼が不思議がるのは当然だ。見ず知らずの私を心配してくれる彼の優しさに、私は自然と口を動かしていた。

「私、事故の影響で、数年前からの記憶が欠けてしまったんです。だから、その期間に出会った人とどんな関係かも分からなくて……今の私が嫌だと感じても、本来の私はそれが普通だったかもしれないんです」

「でも、今嫌なら嫌って言っていいじゃん。それって、嘘吐かれてても分からないんでしょ? 騙されてる可能性だってあるじゃん」

 彼の言葉に、私は反論出来ない。そして、首を縦に振る事も出来ない。

「……それでも、本当の可能性があるなら、私は彼を拒絶出来ません」

 それが本当の「私」だと言うならば、私は受け入れざるを得ない。記憶を取り戻さなければ、私はただの欠陥品なんだから。

「そんなの……」

 彼が言いたい事を飲み込んだのは、彼もまた複雑な事情を抱えているからだろう。
 
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