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純の恋人
第2章 三人の男
 
「良かった。退院しても、オレ達終わりじゃないよね? この先も、末永ーくよろしくお願いします」

 深々と頭を下げるイドさんを見ていると、私は胸を締め付けられる。出来る事ならすぐに頷きたいところだけれど、それを『私』が良しとするかは分からない。記憶を取り戻すまで、私には無責任に答えられなかった。

 けれど、イドさんはそれを分かっている。私が黙ってしまっても嫌な顔一つせず、私の頭を撫でた。

「純ちゃんは偉いね。そういうところが心配だけど、一番好き」

「……ごめんなさい」

「謝らなくていいよ。今は一番であれば、それで」

 頭を撫でていた手が私の顎を取り、イドさんのあどけない顔が近付いてくる。今度は唇にキスされる。私が目をつぶり、それを受け入れようとしたその時だった。

 廊下から、病室に入ってくる革靴の固い足音が二つ。イドさんは慌てて身を離し、椅子に座り直す。

「失礼」

 声が掛かると共に、カーテンが開かれる。立っていたのはスーツ姿の男性二人。二人とも、年は松永さんと同じくらいだろうか。一人はスキンヘッドでかなりの大柄。もう一人は、眉間に皺を寄せた、神経質そうな眼鏡の男性だった。
 
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