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純の恋人
第1章 欠陥品の彼女
 
 白い歯を見せて朗らかに笑う彼は、私の入院生活にとって太陽みたいな存在だ。彼は、病院に入院してから初めて出会った、過去のしがらみとは何の関係のない人間である。だからこそ、妙な気も遣わず安心して話せる、唯一の人だった。

「イドさん」

 私が期待を込めて彼の名前を呼ぶと、彼は眉を下げ苦笑いする。

「もうすぐ看護師さんが来るんじゃないの?」

「しょっちゅう部屋から抜け出してるイドさんには、言われたくないです」

「三人目の彼氏じゃ、足りなかった? もう二人分のちんこ食べちゃったのに、やらしい子だなぁ。ああ、それとも一人目の彼氏がいつまでもヤってくれないから、溜まってる?」

「イドさんが欲しいから、じゃ理由になりませんか?」

「それは……一番嬉しい理由だね」

 イドさんは私の手を引き寄せ、キスをする。ほんのり煙草の香りがするその味は、知らなくて当たり前である。けれど知ってしまった今、それは私にとって手離せない安定剤だった。

「外……行こっか。トイレだと、看護師さんにすぐ見つかっちゃうかも」

 イドさんは立ち上がり、手を繋いだまま歩き出す。心臓が高鳴るのは、背徳感のせいではなかった。
 
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