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純の恋人
第4章 そして誰もいなくなった
 
 何気なく話したつもりのそれに、宮城さんは分かりやすく肩を震わせる。そして光の速さで私から離れると、青ざめながら首を振った。

「お……俺は関係ない、何もしてないからな!」

 そしていかにも怪しい言葉を残して、走り去ってしまう。さっきの喜びは何だったのかと思うくらいの変わりようで。

 一体、どういう事なんだろう。宮城さんは、記憶を取り戻す事に好意的だった。過去を思い出されても、父と違って困りはしないんだろう。だとすれば、なぜ事件と聞いてあんなにうろたえたんだろう。

 表情や態度に気持ちが現れやすい分、宮城さんは分かりやすい。でも、真実が何かはちっとも分からなかった。

 はっきりしたのは、私と宮城さんがかつて、どんな距離感だったかだけ。「ミヤ」と呼べば、無意識に敬語が取れた。少しだけれど、前進している。その事実は、私を奮い立たせた。

 そして最後は、田中さん。正直私は、この人の反応が一番予想出来ない。どうなるか不安に駆られながらも、いつも通り過去を見つめたままの田中さんに打ち明けた。

「あの……」

 事件かもしれない――私が全て口へ出さないうちに、彼は激昂し私をベッドに押し倒した。
 
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