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獣日和
第1章 はじまり


とは言え、二人の事を好きになるかも分からないのに、結婚を前提に二人と一緒に暮らすのは……期待を持たせるみたいで気が進まない。





「やっぱり私……」





二人の顔を交互に見ながら、断るつもりで口を開いた。
そんなふみの心をよんだかのように桜太は話に割り込んで、突然服の袖をちょんっと掴んでくる。






「ふみちゃん……お願い。俺達にチャンスちょうだい。一緒に暮らそうよ」

「っ……!」

「家賃タダで良いよ? それに……家事も俺達が全部するから……」






その涙でうるうると潤んだ瞳にじっと見つめられ、まるで小動物のように可愛らしく甘えられる事がふみの弱点だと、昔から桜太は知っていた。



……この人間離れした可愛さは反則。




ふみは動揺し、たじろぎながら、恐る恐る質問する。






「うっ……でも、二人のこと、好きになるかも結婚するかも分からないよ? ……というか、好きにならないよ?」

「うん、良いよ。それでも……ふみちゃんと一緒に暮らしたい。お願い、ふみちゃん」

「ううっ……」






突然両手を掴まれ、更にジッと潤んだ瞳で見つめられると。


……気づけばふみの口からは勝手に、






「分かった……ここで……暮らす……」






そんな言葉が漏れていた。
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