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言われてみれば、単純で。
第4章 俺と君は、曖昧で。02
キョーちゃんはローテーブルの下にある小さな箱から彼女らしいシンプルなパッケージデザインのハンドクリームを取り出した。
それの蓋を開けてから俺に手渡す。

こんなのあまり使ったことないからよく分からない。

小さな頃無理矢理塗られてすごく嫌だったのを覚えてるから毛嫌いしていた。
だけどキョーちゃんにそんなこと言ったら格好悪いでしょ。

俺は言われるままにした。

「これどのくらい塗るの?」

「適当に」

「適当ってこのくらい?」

「丹羽先輩。それは出しすぎです」

そう言って俺の手に広がったハンドクリームをキョーちゃんが自分の手に重ねた。
冷たいハンドクリームと暖かいキョーちゃんの手が重なって妙な気分。

「なんかエロいね」

「そんなことないです。
丹羽先輩の頭がそうなだけじゃないですか」

「そう?」

「そうです」

「はじめ会ったときもこうやって手繋いだね」

「あれはただの握手です」

「キョーちゃんの手ちっちゃくて可愛かったなー」

「丹羽先輩も小さい手してましたよね。可愛かったなー」

「真似しなくていいよ。てか、よく覚えてるね」

「チビは手も小さいと思ったの思い出しましたから」

チビってひどくない?
そう思いながらもキョーちゃんの手が俺の手に重なりあうのはやっぱりエロいと思った。

指と指を絡め合わせて、冷たかったクリームが温かくなってきて。
キョーちゃんの手つきは何だか色っぽいと言うか艶っぽいと言うか。

とにかく、押し倒したくなるくらいだった。だけどそうしなかったのは何故なんだろう。
多分今まで「好き」って言ってきた相手ならそうしてたと思う。

やっぱり彼女に対しては「好き」という言葉じゃない気がする。
そして彼女を目の前にすると俺は自分で思っているよりも臆病で、慎重になってしまっている。
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