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第2章 　　

　最初に断っておきますが。



　あなたたち2人のあいだに起きた出来事はすべて一貫して、大基の妻としての私の主観で捉えています。



　ですので綾香ちゃんにとっては気分を害する、或いは、そうじゃない、と感じる箇所があるかも知れません。


　ごめんなさいね？

　
　冷静にならなければならない。
　第三者としての客観的視点を持たなければならない。
　とは。
　頭では、分かってるんですよ？



　でも・・・。
　率直に申し上げると。
　妻として、あのとき約1年ものあいだ、あなたたち・・・



　夫である大基と。
　その不倫相手である綾香ちゃんの関係を暖かく見守ってきた、私の平常心が、ですね？



　綾香ちゃんからの、昨日の電話のせいで・・・。
　家の留守電に入れてくださった、涙声のメッセージのせいで・・・。


　1年前に終わったはずの、あなたたちの関係をですよ？
　やっと取り戻した家庭内の平穏な時間をですよ？



　もう一度かき回して乱すような真似をあなたがとったことに対し、どうにも、こう・・・



　分かります？


　　
　なんていうんでしょう・・・。



　そうしなければこれ以上平常心を保てなくなりそうな恐怖心に包まれてしまった、と説明すればお分かりいただけるでしょうか。




　ご理解くださいね。
　なぜかっていうと私ね、今、お腹の中に大基の子を宿してるんです。
　そう、3人目。


　すごく・・・すごく、いま、私ね。
　すごく幸せですよ。


　愛する人の子供が自分の身体の中で、今こうしてあなたに憎悪を抱いている間にも絶えず細胞分裂を繰り返しているんです。
　想像できますか？
　大基の命の一部が、私の身体の中で生きているんです。
　妻として、こんなに幸福なことってほかにありますか？　


　そんなときにあなたの声を聞いて、あのころの色んな感情が蘇って・・・


　留守電を再生している最中に、大基の子供がお腹を蹴り上げて・・・

　
　もし大基がまた私に通帳を差し出したらって考えたら・・・・。



　ね？
　私が冷静じゃいられなくなるの、想像くらいできるでしょう？


　
　妊婦になると、メンタルが不安定になるんです。
　ごめんなさいね。