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琥珀色に染まるとき
第20章 ラスティネイルの夜


第二十章 ラスティネイルの夜




「じゃ、お先に」

 事務作業で残っている数人の警護員にそっけなく声をかけ、足早に事務所を去る。愛想がないのはいつものことで、同僚たちは気にも留めずに挨拶を返してくれる。だがその中で一人だけ、涼子の些細な異変に気づく男がいた。

「今日は一段と可愛げがないな。顔もこえーし……って、それはいつもどおりか」

 下りエレベーターを待っていると、後ろから話しかけられた。振り向きざまに、鋭く言い返す。

「顔は生まれつきよ」

 にっ、と歯を見せる犬顔。

「駅まで送ってやろうか」
「なにふざけたこと言ってるの。新しい依頼人の警護プラン、今日中に仕上げるんでしょ。早く戻りなさいよ」
「別にふざけてないけど……ま、いいや。それよりお前、そのバッグ」
「え?」

 肩にかけている黒い仕事用バッグに目を落とす。

「これがなに」
「……いや」
「古くなったから買い替えろってこと?」
「まあ、そんなとこ。もうちょい女性らしいのがいいんじゃないかなって。買ってもらえば?」
「大きなお世話」

 だな、と呟いて、城戸は笑う。

「一人で帰れるか?」
「当たり前じゃない」
「そっか。夜道は危ないから気をつけろよ」

 エレベーターが到着し、扉が開いた。じゃあね、と城戸の顔を見ずに言い残し、足を踏み入れる。

「……そんな顔が見たくて、あの人に譲ったわけじゃねぇぞ」

 背後で聞こえた低い声に振り返ると、真剣なまなざしがそこにあった。

「お前、今幸せ?」
「…………」

 唐突な質問に答えあぐねていると、城戸は複雑そうな微笑を浮かべるだけでそれ以上なにも言ってこなかった。

「お疲れさん」

 扉が閉まる直前に聞こえた、その哀しげな声がやけに耳に残った。

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