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愛しては、ならない
第42章 最初で最後の……


森本は、目を細めて笑うと私の手を引き歩き始めた。



「さあ、時間が勿体無いから遊びましょう~」

「あ、あの……」

「そうだなあ……手始めはあれ、やりますか」

「?」



彼が指差したのは、丸い柵の中に何体かあるパンダの乗り物だった。

小さな子供が父親と一緒になって遊んでいるが、そのパンダの顔は間が抜けていて、スピードは非常にのろい。

私は思わずプッと吹き出してしまうが、彼は大真面目だった。


「さあ、行きますよ!」

「森本くん……私、恥ずかしいんだけど」


周りは小さな子供逹ばかりで、大人が跨がるには躊躇ってしまう。

だが彼は有無を言わさずに私を抱きかかえてパンダに乗せると柵の外へ出てしまった。


「ちょっと……森本くん!」


慌てる私を彼はスマホのカメラで撮り始めた。


「か――わいいなあ、似合いますよ」

「森本くんってば――もうっ」


エレクトーンの音色の調子外れのメロデイーが流れ始めて周りのパンダも動き出し、ぶつかってきそうな子供の運転するパンダを私は慌てて避けた。
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