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愛しては、ならない
第43章 こわれる



「真歩……っ」

「ほらっ!しっかりしないと!
行くよ!!」



腰砕けになりそうなのを彼女が支えてくれて、なんとか歩き出すが、ロビーに佇む人物が目に入り私は硬直する。

真歩は私の肩を軽く叩いて言った。



「花野さん達は祐樹を迎えに行ったのよ……」

「そ……そう……」



こんな時にまで、私の胸は高鳴る。

白く無機質な病院の壁と床。そんな中で一際鮮やかに美麗に目に映る貴方の姿に。

一目見た時から私の何もかもを夢中にさせた貴方。

デニムのシャツの袖から覗く綺麗な形の手と長い指。

もて余す程に長い、優美な脚。

そして何より私を恋しい気持ちで縛り付ける、その切れ長の瞳。



「……剛さ……」



突き放したのは私。

なのに、こうして貴方に会ってしまえばまた心を奪われてしまう。

思わず彼を呼び、手を差し出すが、彼は私をチラリと見ると踵をかえし、背を向けて先に行ってしまった。

殴られたような衝撃を受けた私は、身体中の力が入らなくなり、真歩が慌てて抱き留めてくれる。



「ちょっと――!あんたが今倒れてどうすんのよっ」

「うん……ごめん……ごめんね……」


遠ざかる冷たい靴音を聞きながら、私は涙を溢していた。

彼に嫌われても、仕方がない。

傷つけたのは私なんだから――









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