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愛しては、ならない
第44章 こわれる ②


俺が首を振ると、彼女はキッと睨み付ける様にして水を口に含んだかと思うと、俺の頭を掴み引き寄せて顎を持ち、唇を重ねてきた。

水が、彼女の口づたいに流れ込んできて、否応なく飲み込んでしまう。

呆気に取られる俺に構わず、また同じ事をしようとする彼女だったが、俺がその細い腕を掴み止めた。



「ま、待って岬さん……そこまでしなくても……自分で飲むから」

「本当に?」

「あ、ああ」

「なら、よし!」



彼女はニッコリ笑うと水を俺に渡し、また病院の中を目を凝らして見ている。

俺は水を少しずつ飲みながら、大分落ち着きを取り戻して来た。

吐き気も寒気も感じなくなり、物事を少しずつ冷静に考えられる様になってきたような気がする。

彼女の突飛な行動に毒気を抜かれたせいだろうか?

天然パーマのお団子から、ほつれて風に靡く柔らかそうな髪と、白いうなじをぼんやりと見詰めて居たら、彼女が振り返った。



「帰りたくないなら、うちに来れば?」
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