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第47章 埋まらない溝

菊野は、今頃まだ泣いているだろうか?

あの少女のような幼い彼女が肩を震わせて嗚咽を堪える姿を思い浮かべると、苦い物が喉の一歩手前までせり上がってくる。

これ以上、泣かないで欲しい。だが、泣くのを堪える彼女の姿も切ない。

彼は、つい先程まで清崎の身体に溺れるほど夢中になっていたのに、飛び出した彼女よりも菊野の事で頭が一杯な自分は残酷だ……と思った。

菊野には家族が付いている。小さい騎士の祐樹も居る。あの真歩とか言う友達も。

だが清崎には……




――晴香には……誰が居るんだ……?




『私……もう、生きていたくない』



突然、以前彼女が洩らした言葉が蘇り、彼はガバッと身体を起こし、スマホを手に部屋を飛び出した。