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愛しては、ならない
第48章 喪われた記憶と


悟志は、剛の名前を出されてもキョトンとするだけで、彼が居なくなってしまい、皆が血相を変えて騒いでいる時にも反応が鈍かった。

まるで他人事の様に。




――本当に、本当に覚えていないの?

剛さんとの事を疑って、私に詰めよって、烈しく抱いた事も?

私が彼を引き取る為に、祐樹と一緒に何度も施設に足を運んで、その度に悟志に話していたのに。遊園地での事も忘れてしまった……?

悟志さんは……忘れた振りをして、私を試そうとしているのではないの?



正直、こんな風に疑心暗鬼だった私なのだが、悟志のそんな様子を見て、本当に剛の事が分からないのだ――と悟った。

それは、剛にとってはとても残酷な事実なのではないだろうか?とも思った。

私たちと血の繋がりのない剛は、いくら皆に暖かく分け隔てなく接して貰っていても、その事実を忘れる事はなかっただろう。

悟志が、剛だけの事を忘れてしまった。

それは、剛にはショッキングな事実だろう。



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