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愛しては、ならない
第49章 それぞれの決別



カンカンカンカン……


電車の通過を知らせる踏み切りの音が、思い出に沈みかけていた真歩を現実へと引き戻した。



「ふう――また思い出しちゃった、本当に痛いなあ私……
一日の内の半分……いや七割……位?悟志さんの事を考えてるかも……」



真歩は、もし悟志が目覚めたら、何かが変わるような気がしていたのだ。

高校生の頃から気持ちが変わらないままで二十九歳になってしまい、未だに新しい一歩を踏み出せない自分。

悟志への想いを燻らせたまま、妻子ある人との火遊びに溺れたり、同時に何人もの男と関係を持ってみても、楽しいなどど思ったことは無かった。

満たされるのは身体だけで、心は荒んで行くばかり。

癒されるのは西本の家に遊びに行った時だけだった。

そこへ行けば悟志に会える。

あんなに深く愛されていながら、悟志を男として見れない、という菊野には不思議と腹が立たなかった。

菊野の事を何だかんだ憎めないのだ。


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