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愛しては、ならない
第54章 四年後



小さな頃は、自分と同じ目線でバカな話をしたり、遊んだりしてくれる悟志を大好きだったし、仕事から彼が帰ってくるのを本当に楽しみに待っていた。

だが、中学に上がってからと言うもの、時々ウザいほどに「大人風」を吹かせて熱く語りたがるので、祐樹はその度に閉口した。

菊野はいつもそんな悟志をやんわりと注意して、祐樹を助けてくれるのだが、時々彼女は心此処にあらずというか、虚ろな表情をしてテレビを見詰めている事がある。

画面に向いているが、その目は何処か別の物を見ている様に感じる。或いは、何も見ていないのかも知れない。

能天気で、子供の様な菊野は昔から変わらないが、ふとした瞬間に物憂げな雰囲気を醸し出すことがあり、そんな時には、祐樹が悟志に果てしない説教を喰らっていようが、火にかけた鍋が吹き零れようが、意識が暫く戻ってこないのだ。

剛がここを出ていってからそういう事が多くなった様に感じる。



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