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愛しては、ならない
第54章 四年後



結局、剛は何故家を出ていったのだろうか?

悟志が入院、退院した頃の不穏な空気から、何かがあった、と言うのは推測出来るが、本当の所は分からない。

祐樹自身も彼に感情的な言葉をぶつけた事もあるが、それだけがきっかけでは無いだろう。

考えてみたところで分かる筈もないし、あの頃に時間を巻き戻しも出来ないのだから。

祐樹は時々剛の所に泊まりに行ったりしていた。

剛は何も聞いてこないが、祐樹の方から菊野の様子を話したりした。

他愛も無い日常の事から、悟志とも仲良くやっている事などを話すと、彼は物静かな瞳を時折揺らして微笑むのだった。



「たまには家に帰ってやれよ……母さん、寂しそうだしさ」



と言うと、彼は悲しげに目を臥せて首を振るばかりだった。



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