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愛しては、ならない
第54章 四年後




祐樹は、剛の左隣に立って挑みかかるような目を向けると、明るい和音を弾き始める。

剛と目が合うと、悪戯な笑みを溢して言った。



「真歩先生……真歩先生の結婚式なんだよ」

「ああ……へえ、そうなのか」

「うん。剛が出て行く前に家教辞めてから、母さんと会ってなかったし、遊びに来ることも無くなってたんだけどね、招待状が来てさ」



祐樹は結婚行進曲を自分の勝手なアレンジで弾いている。

剛も高音のパートを彼に合わせて弾き、二人のちょっとした華やかな連弾になった。



「東北の農家の嫁になるらしいよ」

「……意外だな」

「まあ、愛は人を変えるんだろうね――」

「何を生意気いってんだ」



剛に突っ込まれて祐樹はアカンベをして見せた。




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