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愛しては、ならない
第56章 二十歳の同窓会



俺は何度も夕夏を絶頂に導き、彼女の身体を最後に貪り尽くし、欲を解き放った。

呆然とベッドのシーツを握り、宙を見詰める彼女に俺は別れのキスをし「……最高に良かったよ。もう、これで君への未練は全く無い。新しい彼と
楽しくやりなよ」と言ったが、彼女は突然わっと泣き出して、平手打ちをして去っていった。

夕夏とはそんな別れかただった。

お世辞にも綺麗な別れとは言えない。

だが、あの一件で、俺は彼女を愛していなかった事に気付いたのだ。

彼女が居なくなっても、涙も流れない。

胸の奥が痛むこともない。

菊野と別れた帰り道、夕焼けを背に坂道を歩きながら声をあげて泣いたあの日のように激情に駆られる事は無かった。

その後にも何人かと深い関係になって別れる度に、同じ感覚に囚われた。

俺は人を愛せないのだろうな、と思ったのだ。

愛する事も出来ないのに、身体だけは貪欲に欲しがる、最低な獣だ。






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