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愛しては、ならない
第56章 二十歳の同窓会





店は非常に分かりやすい場所だった。

葉書に一応地図が書いてあるが、電車から降りて一分も歩かない距離だった。

煉瓦造りの外壁に蔦の葉が飾りのように絡み付いて、クラシックな雰囲気の高級、とまではいかないが、程よく上品な感じの外観の店だった。

この街には用は無いから来ることも無いので、四年前と様子がかなり変わっている事に驚いた。

駅前通りにあった、清崎や森本とよく行ったカフェはアンテナショップになっていたし、俺が菊野に咬まれた傷を診てもらった病院の横にあった本屋はアロマテラピーとマッサージのサロンになっている。



「さて……時間までまだあるな……どうするか」



俺はスマホで時間を見て呟き、ふと空を見上げる。

家を出るときには雲ひとつない青空だったのに、電車から降りた頃には西の方から怪しげな黒い雲が迫っている。

今はまだそれでも太陽が顔を出しているが、帰る頃には降るかも知れないと思い、近くのコンビニでビニール傘を買った。






――そう言えば、天気予報を見てくるのを忘れたな……





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