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愛しては、ならない
第58章 再会


鍵をバッグにしまいながらソファに座り溜め息を吐く。



――剛さんが帰ってきたかと思って、無駄にドキドキしちゃった……

なんだか、バカみたい。



キッチンの方を見て、ケーキは冷蔵庫に入れた事、スープが出来た事、パエリアは材料を入れて炊飯のタイマーが入っている事を確認して安心すると急に眠くなってしまい欠伸をひとつした。

今日は張り切り過ぎた様な気がする。

張り切り過ぎて空回りしたような……

森本が、剛が直ぐに帰ってくると言っていたが、それは彼得意の冗談のように思えてきた。

彼は時々本気とも冗談ともつかない事を言って人が慌てるのを見て楽しむと言う趣味がある。

人が、と言うよりは、言われたことを全て信用してしまう私をからかって遊ぶのが好きなのかも知れない。



「もう……今日のこれもきっと森本くんのウソよ……今度と言う今度は悪い冗談だわ……怒ってやらなくちゃ……」






ひとりごちながら、瞼と身体が重くなってきた。

窓ガラスと屋根を叩き付ける雨音が心地好く私を微睡みに誘っている。

眠ったらまずい、と思ったのも束の間ソファに背を凭れた瞬間、眠りに落ちてしまった。





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