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愛しては、ならない
第59章 再会②



「っ……はっ……っ……ははは」



電車が豪雨で遅れてしまい、待っていられずに走って家を目指した俺だったが、30分も走る間には流石に自分のバカさ加減に笑えてきた。

――何も、今日、何がなんでも菊野に会おうとしなくたって、メールで彼女と約束を取り付ける事も出来るのに。

建前は俺と彼女は「母と子」なのだから、会っていけない理由などない。

花野は時々家に来たり、ピアノを教えてくれたり、時には食事に誘ってくれたりもするが、俺と菊野の間にあった事を察しているようにも見えるし、そうでないようにも見える。

『菊野も寂しがってるわよ。お正月くらいは帰ってあげなさいね』と言われる事もある。

だが俺は菊野と普通の親子になどなれないし、会ったりしたらまた彼女への気持ちが膨らんでしまう。

菊野を困らせてしまう。

だから、会わずに、電話もしないでいた。

けれど。

菊野以外の女と付き合ったり寝たりしたが、菊野の事を考えない日などなかった。

結局俺は四年経っても変わらぬままなのだ。

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