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愛しては、ならない
第59章 再会②




「……っ」



菊野は、息を呑んで俺の目を真っ直ぐに見つめた。

どちらかが少しでも動いたりしたら、唇が合わさってしまう。

彼女の澄んだ瞳の奥に、赤い焔が見えた気がした。

その色をいつかも見たことがある――そう、俺と愛し合っている最中に、腕の中で俺を見る彼女の瞳の中で、確かに見た――

錯覚なのだろうか。俺の思い込みなのか?

まるで、菊野が俺に恋をしている様に見えてしまう。

そうだ、俺は菊野に聞かなくてはならない事があった筈だった。

森本との事をハッキリと聞くつもりだった。



『俺は、菊野さんを抱いていない』



奴の言葉が頭の中で繰り返される――

聞いた時には信じがたかったが、今目の前に居る菊野を見ていると、本当なのだろうと思えてくる。

いや、そうじゃない。

そんな事はもうどっちでもいいんだ。

今、ここに貴女が居る。それだけで、もういい――







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