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愛しては、ならない
第60章 静まらぬ嵐、吹き荒ぶ恋




衣擦れの音がした次の瞬間雷が鳴って部屋が明るく照らし出され、パジャマの上を脱いだ彼の引き締まった上半身が私の目に飛び込んでくる。

ほんの一瞬だったが、彼の瞳の中に鋭い光が宿り、私を射抜いた。

強い風で時折家の中が揺れ、稲光の後に響く轟音に怯えて身を縮める私を、彼は両の腕で包み込む。

彼の胸の中はとても温かくて、懐かしくて切なかった。

胸に顔を埋めていた私は、ふと彼の顔を見たくなって頭をあげるが、その時一際大きな轟音が響き、強い風が家中を揺らした。

思わず悲鳴を上げる私を、彼は守ってくれるかのように優しく抱き締めてくれる。


「震えてるね……」



髪を撫でながら耳元で囁かれて、私は心地好さにうっとりする。

怖かった。雷も、雨も、吹き飛ばされてしまいそうな風も。

でも一番怖いのは、自分の中にある恋の焔だった。




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