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愛しては、ならない
第65章 BEDTIME STORIES
 俺はあなたに沢山の物語を与えられた。けなげで哀れなふたごの物語。何気ないしあわせがすこしづつ雪のように降り積もるような物語。そして、焼けるように苦しくて甘い恋の物語。
 俺はこの先、あなたにどんな物語をあげられるだろうーー

 「剛さん……?」

 菊野は、黙りこんだ剛に蕩けたマシュマロのような声で問いかける。
 剛は目尻を下げ柔和な笑みを溢し、菊野を強く抱き締めた。

「つよしさ……くるし……もう少し緩め……」
「嫌です」
「えっ」
「このままずっとこうしていたいです」
「そそそそ……それは困るわ」
「でも……あの絵本を毎晩読んでくれるって、約束してくれるなら……いいですよ」
「えええーーっ?」

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