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愛しては、ならない
第12章 その花は、手折(たお)られて




悟志は、愛する妻を抱いた心地好い疲労に酔いながら、菊野の背中の髪を肩に流し口付けた。


首筋に紅い小さな華が咲き、白い肌と菊野の黒い髪のコントラストが美しく、ゾクリと身体を震わせ見惚れる内に、また淫らな欲が湧いてくる。



「菊野……」


囁くが、彼女は既に寝息を立てていた。


子供の様な寝顔に、悟志は苦笑いすると彼女に毛布を掛けてやり、バスローブを羽織り、シャワーを浴びようとベッドから離れる。


やはり、ドアが僅かに開いている――


首を傾げながら部屋から一歩踏み出すと、足元に何かぶつかる。


拾い上げて見ると、それはリボンをかけられた小さな箱で、見かけよりも重みがあった。



箱と一緒に落ちていた小さなカードを裏返すと、悟志の顔色が変わった。



カードにはこう書かれていた。




『菊野さんへ


貴女の笑った顔が好きです


剛 』

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