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愛しては、ならない
第13章 甘い、地獄の日々




――胸で泣いても構いませんよ――



剛の言葉の意味が理解出来るまで、何秒かかかった。


私の頬も、掌も、胸も、身体のありとあらゆる場所が熱を持ち心臓が鳴る。



――そんな台詞を、何故スラスラ口に出来るのだろうか。
まだ中学三年なのに……


私は、剛を訪ねてきた清崎という女生徒の事が思い当たり、今度はまた涙が出てきてしまう。



(剛さんは、キスも経験があるって言ってた……きっと、清崎さんと……あんな可愛い子なら、剛さんとお似合いかも知れないけど……でも、でも私……)



「菊野さん……大丈夫ですか?」


剛は、また泣き始めた私を、気持ち身を屈めて見詰める。



「み……見ないで……っ」


私はタオルを顔に押しあてて彼から背を向けた。


「――菊野さん?」


剛が、少し困っているようだった。


それはそうだろう。
只でさえ、年頃の男の子は母親が怒ったり泣いたりするのは面倒な筈だ。
しかも自分は彼の母でもなく、友達でもなく、恋人でもない。


(早く泣き止んで、彼を解放してあげなくちゃ……)


と頭では思うのだが、嗚咽が、涙が次から次へと溢れる。
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